仙台高等裁判所 昭和35年(ラ)27号 決定 1960年8月29日
抗告人 鳥畑シン子、鳥畑しん子こと鳥畑シン
主文
原決定を取り消す。
抗告人と砂庭清吉間の青森地方裁判所八戸支部昭和三〇年(ワ)第四七号債務不存在確認等請求事件につき、昭和三三年四月二二日、昭和三一年(ネ)第三四五号事件として、仙台高等裁判所がなした判決によつて抗告人の負担すべき訴訟費用額は、別紙第一計算書記載のとおり金三七、六一三円と確定する。
理由
抗告人は、「原決定を取り消す。青森地方裁判所八戸支部昭和三〇年(ワ)第四七号債務不存在確認等請求事件につき、昭和三一年(ネ)第三四五号債務不存在確認等請求控訴事件として昭和三三年四月二二日仙台高等裁判所がなした判決によつて抗告人の負担すべき訴訟費用額は、別紙第二計算書記載のとおり金二八、七六三円と確定する。」との裁判を求める旨申し立て、その理由として、「(一)、訴訟費用は敗訴の当事者が負担すべきものであるが、それは当該訴訟における必要限度のものでなければならない。青森県三戸町に居住する当事者が口頭弁論期日に仙台市にある仙台高等裁判所に出頭するには、当日仙台市に到着する汽車を利用するのを通例とし、同裁判所における本件各口頭弁論期日は、おそくとも当日の午後三時までに終了したから、当日汽車を利用して帰宅することができ、宿泊の要はなかつたものである。また、夜行列車による時間の経過をもつて宿泊とみなすべき規定は存しない。(二)、しかるに、原決定は、第二審の各口頭弁論期日につき、宿泊料一泊分九八〇円を計上しているが、前記の次第で、これらは除外されるべきものである。本件訴訟費用額は、別紙第二計算書記載の如くである。」と主張した。
まず、宿泊料を計上することの当否について考えてみる。
原決定は、抗告人に負担せしめるべき訴訟費用として、第二審たる仙台高等裁判所における(一)昭和三一年一〇月三〇日、(二)昭和三二年一月一七日、(三)同年三月一二日、(四)同年五月一四日、(五)同年七月一六日、(六)同年一〇月一日、(七)同年一一月二八日、(八)昭和三三年一月二八日、(九)同年四月一日の各口頭弁論期日につき、宿泊料各九八〇円を計上したが、これについての疏明は全くない。しかし、本件記録によれば、前記(三)の口頭弁論期日は午後一時に指定されたが、その余の(一)(二)(四)ないし(九)の期日はすべて午前一〇時に指定されたことが明らかであり、国鉄東北本線三戸、仙台間の距離は二七一、七粁(往復五四三、四粁)であり、交通の頻繁でない三戸駅から仙台駅にいたり、午前一〇時または午後一時の期日に出頭して口頭弁論をなし、帰還するためには、たとえ固定宿泊施設に宿泊しなかつた場合でも、その往または復に必ず少くとも一回は午前〇時を経過する夜行列車を利用しなければならなかつたことは公知の事実である。ところで、昭和二五年法律第一一四号「国家公務員等の旅費に関する法律」第六条第七項は、宿泊料は旅行中の夜数に応じて支給する旨を、第八条は、旅費計算上の旅行日数は、鉄道旅行にあつては、四〇〇キロメートルについて一日の割合をもつて通算し、一日未満の端数を生じたときは、これを一日とする旨を、また、別表第一の一備考において、固定宿泊施設に宿泊しなかつた場合でも宿泊したとみなすことのできる場合がある旨を定めているが、このことは、訴訟費用額の算定にあたつても、参考に値するものである。そこで、以上の各事実を併せ考えれば、本件の場合、前記各口頭弁論期日につき止宿一日と定めることは、社会通念上相当であるものと認めるべきである。
つぎに、抗告人は、原決定別紙計算書に、「三〇円、訴訟費用額確定決定申立の印紙代」「七五〇円、本計算書書記料」とあるのに対し、別紙第二計算書記載のとおり、「九〇円、訴訟費用額確定決定申請書料」「七五円、計算書謄本書記料」とすべきであると主張する。さて、本件訴訟費用額確定決定申立書別紙計算書には、「訴訟費用額確定決定申立書書記料」「計算書書記料」なる項目は見当らず、「訴訟費用額確定決定申立の印紙代」「本計算書書記料」の二項目があり、その額は、前者は三〇円、後者は七五〇円である。そして、右印紙代が三〇円であることは、本件記録によつて明白であるが、「七五〇円、本計算書書記料」は、計算書原本のみをいうのか、その謄本をも含むのか、また、申立書の書記料を合わせているのか明らかではないが、その額は、民事訴訟費用法第二条第一項、訴訟費用等臨時措置法第二条によれば、書類五〇枚分の書記料額であることが明らかである。本件記録によれば、訴訟費用額確定決定申立書が一枚、同計算書が五枚であることが明白であるから、右申立書の書記料は一五円である。また、民事訴訟法第一〇〇条は、訴訟費用額確定決定申立人に対し、計算書とその謄本の提出を命じているが、右謄本数は、相手方が一人である本件の場合には一通であるべきものであり、右計算書が提出されたことは本件記録に徴して明白であり、特別な事情の認められない本件にあつては、右謄本の提出があつたものと認めるのが相当であるから、計算書、同謄本書記料として合計一五〇円を計上すべきものである。ところで、訴訟費用額確定決定の総計額は、当事者の申し立てた額を超えることは許されないが、その範囲内において不当な項目を削除又は減額し、或いは正当な項目を追加又は増額することは差し支えないものと解するのを相当とする。けだし、訴訟費用額の確定決定は、これによつて単にその数額を確定するにすぎないものだからである。よつて、本計算書書記料なる項目は、これを訴訟費用額確定の申立書書記料、同計算書(謄本共)書記料と改め、その額七五〇円は、これを一五円、一五〇円と改めるべきものである。
それで、抗告人の負担すべき訴訟費用額は、別紙第一計算書記載のとおり金三七、六一三円と確定する。
そうすると、これと異なる原決定は不当であつて、本件抗告は一部理由があるから、民事訴訟法第四一四条、第三八六条を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 鳥羽久五郎 畠沢喜一 桑原宗朝)
第一計算書
第一審の分
一金 七千七百弐拾六円也
内訳
二、九九〇円 訴状貼用印紙
一三二円 訴状書記料正副二通分及委任状印紙代書記料
一九〇円 期日呼出費用(昭和三十年四月十九日)
二八〇円 弁論期日(昭和三十年四月十九日)出頭日当三戸・八戸間往復汽車賃
二八〇円 弁論期日(昭和三十年六月七日)
一九〇円 証拠申出貼用印紙及書記料(昭和三十年七月九日)
三七円 期日変更申請貼用印紙代及書記料(昭和三十年七月十四日)
四五円 原告代理人呼出費用(昭和三十年八月十九日)
四五円 〃 (昭和三十年十月十日)
四五円 証人砂庭栄一呼出費用(昭和三十年十月十日)
二八〇円 弁論期日(昭和三十年十月十日)出頭日当三戸・八戸間往復汽車賃
一二五円 取寄書類の嘱託費用(昭和三十年十一月十五日)
四五円 証人砂庭栄一呼出費用(昭和三十年十二月二十三日)
三七円 期日変更申請貼用印紙及書記料
四五円 証人砂庭栄一呼出費用(昭和三十年十二月二十六日)
四五円 原告代理人呼出費用( 〃 )
二八〇円 弁論期日(昭和三十年十二月二十六日)出頭日当三戸・八戸間往復汽車賃
四五円 原告本人呼出費用(昭和三十一年二月十日)
九〇円 甲第一号証の一書記料(正副二通)
三〇円 〃 の二 〃 ( 〃 )
九〇円 甲第二号証の一書記料(正副二通)
九〇円 〃 の二、三、四、書記料(正副二通)
二八〇円 弁論期日(昭和三十一年二月十日)出頭日当及三戸・八戸間往復汽車賃
一一〇円 請求の趣旨訂正の申立、貼用印紙及書記料(昭和三十一年三月七日)
一三〇円 証拠申出貼用印紙及書記料(昭和三一年三月七日)
一一〇円 取寄書類嘱託費用(昭和三十一年三月七日)
二八〇円 弁論期日(昭和三十一年三月九日)出頭日当及三戸・八戸間往復汽車賃
二八〇円 〃 (昭和三十一年四月二〇日)〃 〃
九〇円 予告登記嘱託費用(返信用含む)(昭和三十一年三月十四日)
六〇円 甲第三号証書記料(正副二通)
三〇円 甲第四号証書記料( 〃 )
三三〇円 弁論期日(昭和三十一年五月三十一日)出頭日当及三戸・八戸間往復汽車賃
一一〇円 準備書面貼用印紙及書記料(昭和三十一年五月二十一日)
一一〇円 取寄書類返還費用(昭和三十一年八月七日)
一九〇円 判決正本送達費用
九〇円 甲第五号証書記料(正副二通)
九〇円 甲第六号証書記料( 〃 )
第二審の分
一金 弐万九千八百八拾七円也
内訳
四、三三五円 控訴状貼用印紙
一〇二円 委任状貼用印紙及書記料(昭和三十一年八月十八日)
一〇〇円 訴訟記録送付請求料(昭和三十一年八月二十日)
一四〇円 双方期日呼出費用(昭和三十一年十月三十日)
二、二一〇円 弁論期日(昭和三十一年十月三十日)出頭日当宿泊料及三戸・仙台間往復汽車賃
三一〇円 証拠申出貼用印紙及書記料(昭和三十一年十一月五日)
四五円 嘱託書送付料(八戸簡易裁判所へ)(昭和三十一年十一月九日)
九〇円 砂庭イソ同砂庭清吉呼出費用(昭和三十一年十二月一日)
四五円 控訴代理人呼出費用(昭和三十一年十二月一日)
三三〇円 証拠調期日(昭和三十一年十二月一日)出頭日当八戸・三戸間往復汽車賃
九五円 八戸簡易裁判所より書類返送料(昭和三十一年十二月十四日)
四五円 嘱託書送付(青森簡易裁判所へ)(昭和三十一年十一月九日)
九五円 被控訴人代理人呼出料(昭和三十一年十二月十三日)
三五円 証人砂庭清吉呼出費用(昭和三十一年十二月十三日)
六五円 書類返送料(昭和三十一年一二月一四日青森簡易裁判所より)
二、二一〇円 弁論期日(昭和三十二年一月十七日)出頭日当宿泊料及三戸・仙台間往復汽車賃 四五円 嘱託書送付料(八戸簡易裁判所へ)(昭和三十二年一月三十一日)
四五円 控訴人代理人呼出費用(昭和三十二年二月十九日)
四五円 控訴本人呼出費用(昭和三十二年二月十九日)
三三〇円 証拠調期日(昭和三十二年二月十九日)出頭日当八戸・三戸間往復汽車賃
六五円 書類返送料(八戸簡易裁判所より)(昭和三十二年二月二十二日)
二、二一〇円 弁論期日(昭和三十二年三月十二日)出頭日当宿泊料及三戸・仙台間往復汽車賃
二、三五〇円 弁論期日(昭和三十二年五月十四日)出頭日当宿泊料及三戸・仙台間往復汽車賃
一三〇円 証拠申出貼用印紙及書記料(昭和三十二年七月六日)
一六〇円 〃
二、三五〇円 弁論期日(昭和三十二年七月十六日)出頭日当宿泊料及三戸・仙台間往復汽車賃
一二〇円 準備書面書記料(正副二通)(昭和三十二年七月十六日)
四五円 嘱託書送付料(青森簡易裁判所へ)
三五円 証人砂庭清吉呼出費用(昭和三十二年七月二十二日)
九五円 被控訴人代理人呼出費用( 〃 )
二三〇円 証拠調期日(昭和三十二年七月二十二日)出頭日当
六五円 書類返送料(青森簡易裁判所より)(昭和三十二年七月二十六日)
四五円 嘱託書送付料(八戸簡易裁判所へ)(昭和三十二年七月十二日)
四五円 控訴本人呼出費用(昭和三十二年八月二十九日)
四五円 控訴代理人呼出費用( 〃 )
三五〇円 証拠調期日(昭和三十二年八月二十九日)出頭日当三戸・八戸間往復汽車賃
七五円 書類返送料(八戸簡易裁判所より)(昭和三十二年十一月二十七日)
二、三五〇円 弁論期日(昭和三十二年十月一日)出頭日当宿泊料及三戸・仙台間往復汽車賃
三五〇円 証拠調期日(昭和三十二年十一月三十日)出頭日当三戸・八戸間往復汽車賃
二、三五〇円 弁論期日(昭和三十二年十一月二十八日)出頭日当宿泊料及三戸・仙台間往復汽車賃
二、三五〇円 〃 (昭和三十三年一月二十八日) 〃
六〇円 証拠説明書、書記料(正副二通)(昭和三十二年二月三日)
三〇円 甲第一号証の一、二、書記料(正副二通)
三〇円 甲第八号証の一、二、〃 ( 〃 )
三〇円 甲第九号証の一、二、〃 ( 〃 )
三〇円 甲第一〇号証の一、二、〃 ( 〃 )
二、三五〇円 弁論期日(昭和三十三年四月一日)出頭日当宿泊料及三戸・仙台間往復汽車賃
一九〇円 判決正本送達料(昭和三十三年四月二十二日)
四五円 取寄書類返送料(昭和三十三年五月十日)
三〇円 訴訟費用額確定決定申立の印紙代
一五円 訴訟費用額確定決定申立書書記料
二三〇円 右申立書提出日当
一五〇円 費用計算書(謄本共)書記料
三五円 催告書送達料
一三〇円 決定正本送達料(昭和三三年七月二三日)
合計 金 三七、六一三円
第二計算書
第一審の分
一、金 七千七百弐拾六円也
内訳
原決定と同一につき省略
第二審の分
一、金 弐万壱千参拾七円
内訳
四、三三五円 控訴状貼用印紙
一〇二円 委任状貼用印紙及書記料(昭和三一年八月一八日)
一〇〇円 訴訟記録送付請求料(昭和三一年八月二〇日)
一四〇円 双方期日呼出費用(昭和三一年一〇月三〇日)
一、二三〇円 弁論期日(昭和三一年一〇月三〇日)出頭日当及三戸・仙台間往復汽車賃
三一〇円 証拠申出貼用印紙及書記料(昭和三一年一一月五日)
四五円 八戸簡易裁判所へ嘱託書送付料(昭和三一年一一月九日)
九〇円 砂庭イソ、砂庭清吉呼出費用(昭和三一年一二月一日)
四五円 控訴代理人呼出費用(昭和三一年一二月一日)
三三〇円 証拠調期日(昭和三一年一二月一日)出頭日当及び八戸・三戸間往復汽車賃
九五円 八戸簡易裁判所より書類返送料(昭和三一年一二月一四日)
四五円 嘱託書青森簡易裁判所へ送付(昭和三一年一一月九日)
九五円 被控訴人代理人呼出料(昭和三一年一二月一三日)
三五円 証人砂庭清吉呼出費用(昭和三一年一二月一三日)
六五円 書類返送料(青森簡易裁判所より)
一、二三〇円 昭和三二年一月一七日弁論期日出頭日当及び三戸・仙台間往復汽車賃
四五円 八戸簡易裁判所へ嘱託書送付料
四五円 昭和三二年二月一九日控訴人代理人呼出費用
四五円 右同日控訴人呼出費用
三三〇円 昭和三二年二月一九日証拠調期日出頭日当及三戸・八戸間往復汽車賃
六五円 八戸簡易裁判所より書類返送料
一、二三〇円 昭和三二年三月一二日弁論期日出頭日当及三戸・仙台間往復汽車賃
一、三七〇円 昭和三二年五月一四日弁論期日出頭日当及三戸・仙台間往復汽車賃
一三〇円 証拠申出貼用印紙及書記料
一六〇円 〃
一、三七〇円 昭和三二年七月一六日弁論期日出頭日当及三戸・仙台間往復汽車賃
一二〇円 準備書面正副二通書記料
四五円 青森簡易裁判所へ嘱託書送付料
三五円 昭和三二年七月二二日証人砂庭清吉呼出費用
九五円 被控訴人代理人呼出費用(同日)
二三〇円 昭和三二年七月二二日証拠調期日出頭日当
六五円 書類返送料(青森簡易裁判所より)
四五円 八戸簡易裁判所へ嘱託書送付料
四五円 控訴人呼出費用(昭和三二年八月二九日)
四五円 右同日控訴代理人呼出費用
三五〇円 昭和三二年八月二九日証拠調期日出頭日当三戸・八戸間往復汽車賃
七五円 八戸簡易裁判所より書類返送料
一、三七〇円 昭和三二年一〇月一日弁論期日出頭日当及三戸・仙台間往復汽車賃
三五〇円 昭和三二年一一月三〇日証拠調期日出頭日当及三戸・八戸間往復汽車賃
一、三七〇円 昭和三二年一一月二八日弁論期日出頭日当及三戸・仙台間往復汽車賃
一、三七〇円 同三三年一月二八日弁論期日出頭日当及三戸・仙台間往復汽車賃
六〇円 証拠説明書正副二通書記料
一二〇円 甲第一号証の一、二同第八号証の一、二、同第九号証の一、二同第一〇号証の一、二正副二通書記料
一、三七〇円 昭和三三年四月一日弁論期日出頭日当及三戸・仙台間往復汽車賃
一九〇円 判決正本送達料
四五円 取寄書類返送料
九〇円 訴訟費用額確定決定申請書料
二三〇円 右申請書提出日当
七五円 計算書謄本書記料
三五円 催告書送達料
一三〇円 決定正本送達料
合計 金 弐万八千七百六拾参円